新しい美容液、話題のピーリング、SNSで見かけたインフルエンサーの美容ルーティン——。20代の肌はひとつしかないのに、あれもこれも必要な気がして、私たちはつい「足す」方向に走りがちです。
ニキビに悩んでいる人なら、なおさらそうじゃないでしょうか。何かを塗れば治るんじゃないか、あの成分を足せば変わるんじゃないか。かくいう私もその一人で、気づけばスキンケアの「足し算」ばかり考えていました。
そんなとき、ネットでよく目にする主張があります。「高い化粧品にお金をかけるのは無駄だ」というもの。その根拠として名前が挙がるのが、米国皮膚科学会(AAD)です。
AADはアメリカを拠点とする皮膚科専門医の学会で、世界でも最大級の皮膚科のプロ集団。医師向けのガイドラインだけでなく、一般向けにもスキンケア情報を発信していて、「とりあえずここを見ておけば、極端におかしな情報はつかまされにくい」と言われるくらい信頼度の高い情報源とされています。

そして多くの記事や動画がAADから引用しているのが、「保湿剤・レチノール・日焼け止めを使え」という、ごく一部だけを抜き出したメッセージ。まるで、この3つさえ押さえておけば肌は劇的にきれいになるかのように紹介されることも少なくありません。
もちろん、これらがスキンケアの柱として重要なのは間違いない。でも、それだけでニキビや肌悩みがすべて解決するわけではないはずです。なのに、本当にそれでいいのか?——というモヤモヤがどうしても残りました。
そこで、「そもそもAADは何を伝えようとしているのか」を確かめるために、実際にAADの元記事を読んでみることにしたのです。
私が20代ということもあり、今回読んだのは「20代のためのスキンケアガイド」(Dermatologist-recommended skin care for your 20s)。結論から言いましょう。そこに書かれていたのは、華やかな「やるべきこと」リストではなく、むしろやめるべき習慣への警告でした。
AADが警告する「やってはいけないこと」6つ
「やるべきこと」は肌タイプや体質によって人それぞれ違います。乾燥肌にはセラミド、脂性肌にはさっぱり系の保湿——「攻め」のケアには個人差があるし、本来は皮膚科医と相談しながら進めるもの。
一方で、やってはいけないことは驚くほど普遍的です。一人一人の肌タイプに関係なく、全員に当てはまる。AADの記事を読んで、私はそこに一番大きなメッセージがあると感じました。
以下、AADのガイドと関連する医学的エビデンスをもとに整理していきます。
1. タニング(日焼けサロン・意図的な日焼け)をする
AADの記事で皮膚科医のBaxt医師は、タニングはシワ・シミ・皮膚がんの原因になると明言しています。日焼けベッドを使っているなら今すぐやめるように、とかなり強い言葉で勧告しています。
実際、WHO傘下の国際がん研究機関(IARC)は、UV照射型タニング機器をタバコやアスベストと同等の「グループ1:ヒトに対して発がん性がある」に分類しています。さらにIARCのメタ分析では、30歳未満でタニングを始めた場合、悪性黒色腫のリスクが75%上昇するという報告もある。
「若いうちは大丈夫」という感覚が、実はいちばん危ない。20代でのダメージは静かに蓄積して、30〜40代になってから表面化してくるとされています。
2. 日焼け止めを塗らない
AADは、散歩・通勤・車の運転など、日中に外に出るあらゆる場面で肌は紫外線にさらされていると指摘しています。SPF30以上・ブロードスペクトラム・耐水性のある日焼け止めを毎日使うことが推奨されていて、Baxt医師は「40代で20代の日焼け止め不足を後悔している女性を何人も見てきた」と述べています。
ちなみに、「メイクにSPFが入ってるから大丈夫」というのもよくある誤解。SPFの効果をちゃんと得るには、SPF30以上の製品を約2時間ごとに塗り直す必要があり、実際にはほぼ不可能です。
紫外線による光老化は、目に見える肌の老化サインの最大80%に関与するという研究報告もあります。曇りの日でもUVの最大80%が雲を透過するので、天気に関係なく対策が必要です。
3. 毎日ゴシゴシとスクラブする
Baxt医師はAADの記事で、「スクラブは通常、肌を刺激して炎症を起こし、有用なスキンケア製品を使いにくくする」と警告しています。過度な角質除去によるダメージは、皮膚科医が頻繁に治療するトラブルのひとつなのだそうです。
過剰なスクラブは肌のスキンバリア(角層の保護構造)を物理的に壊してしまいます。バリアが損なわれると、慢性的に炎症を起こしやすくなるだけでなく、以前は問題なく使えていた化粧品にまでアレルギー反応が出ることがあるとKatta医師も指摘しています。

砂糖・塩・くるみ殻などの物理スクラブは特にリスクが高いとされていて、使うとしても週1〜2回程度に留めるのが無難です。
4. メイクを落とさずに寝る
AADは「就寝前に必ずメイクを落とすこと」と指示しています。疲れていても最低限メイク落としシートだけは使うように、と具体的なアドバイスも添えています。
メイクをつけたまま寝ると、汚れ・皮脂・環境中の汚染物質が肌表面に閉じ込められ、酸化ストレスを引き起こします。さらに、肌の修復は主に夜間に行われるとされていて、メイクが残ったままだとその再生プロセスが妨げられてしまう。ファンデーションやコンシーラーが皮脂や角質と混ざって毛穴を詰まらせ、ニキビが悪化する原因にもなります。
20代でニキビに悩んでいるなら、高い美容液を足す前に、まず「ちゃんと落として寝る」を徹底するだけでも状況は変わるかもしれません。
5. SNSのスキンケアトレンドをそのまま実践する
AADは「SNSで見かけるスキンケアトレンドには、害の方が大きいものがある」と明言しています。2023年の声明でも「SNSで見たからといって安全とは限らない」と強調しています。
特に危険とされているのが、自宅でのダーマローリング(マイクロニードリング)やヒアルロン酸の自己注射など。FDAも一部のマイクロニードリング機器について安全性警告を出しており、火傷・瘢痕・神経損傷などの事例が報告されています。
そしてもうひとつ、AADのKatta医師が強調しているのが「一貫性(Consistency)」の大切さ。新しい製品を次々と試し続けていると、何が効いて何が合わないのかすら判別できなくなる。結果として残るのは効果ではなく荒れた肌だけ——というのは、なかなか皮肉な話です。
6. 糖分を摂りすぎる
意外かもしれませんが、AADのKatta医師はスキンケアガイドの中で糖分の制限にも触れています。WHOが勧告する「1日6ティースプーン(約25g)以内」を目安として紹介していて、甘いアイスコーヒー1杯でその2倍以上の糖分が含まれていることもあると指摘しています。

過剰な糖分は体内で「糖化(グリケーション)」という反応を引き起こし、コラーゲンやエラスチンの繊維を硬く脆くしてしまうとされています。これがたるみやシワの一因になる。さらに、糖化は紫外線によって促進されるという研究もあり、日焼け止めを塗らない習慣と糖分過剰摂取が重なると、老化リスクが複合的に高まる可能性があります。
スキンケアというと「肌に何を塗るか」に意識が向きがちですが、内側からのケアも同じくらい重要ということですね。
まとめ:守りこそ最高の攻め
ここまで6つの「やってはいけないこと」を見てきました。改めて並べてみると、どれも特別な知識やお金が必要なことではありません。
日焼け止めを毎日きちんと塗る。タニングをしない。肌をゴシゴシ擦らない。メイクは必ず落として寝る。SNSのトレンドに振り回されず、シンプルなルーティンを続ける。糖分を意識的に控える。そして、攻めたケアをしたくなったら自己流ではなく皮膚科医に相談する。
どれも地味です。映えません。でも、こういう「やらないこと」を淡々と守れる人が、5年後・10年後にいちばん差をつけているのだと思います。
華やかな「足し算」よりも、地道な「引き算」を。守りこそ最高の攻め——そんなふうに考えてみると、毎日のスキンケアがちょっとだけ気楽になりませんか。
あと、絶賛思春期の人が読んでたらこれだけは絶対守ってほしい。絶対ニキビは潰すな。何をしようがニキビはできるときはできる、皮膚科に行こうができるときはできる。潰したニキビは数年後、ポアプライマーを求める奈落となるよ…小さい数ミリの穴ぼこがギュンギュンお金を吸っていく恐怖に震えて眠れ。
追伸:毛穴パックという単語を聞いたら全力で逃げろ
ではまた、次。
参考文献・情報源(2026年4月閲覧)
- American Academy of Dermatology (AAD).
Dermatologist-recommended skin care for your 20s.
https://www.aad.org/public/everyday-care/skin-care-basics/care/skin-care-in-your-20s- International Agency for Research on Cancer (IARC).
Sunbeds and UV Radiation – IARC classifies UV-emitting tanning devices as carcinogenic to humans (Group 1). Press Release, World Health Organization, Lyon, 29 July 2009.
https://www.iarc.who.int/news-events/sunbeds-and-uv-radiation/- El Ghissassi F, Baan R, Straif K, et al.; on behalf of the WHO IARC Monograph Working Group.
A review of human carcinogens—Part D: radiation. Lancet Oncology. 2009;10(8):751–752. doi:10.1016/S1470-2045(09)70213-X
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/19655431/- Rittié L, Fisher GJ.
UV-light-induced signal cascades and skin aging. Ageing Research Reviews. 2002;1(4):705–720. doi:10.1016/S1568-1637(02)00024-7
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/12208239/- Danby FW.
Nutrition and aging skin: sugar and glycation. Clinics in Dermatology. 2010;28(4):409–411. doi:10.1016/j.clindermatol.2010.03.018
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/